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No.54
東京卍リベンジャーズ
こりないやつ(カクイザ)
キスはいつも、イザナから、だった。目の前にふっと淡い影が落ち、あ。と思った次の瞬間には唇を掠め取られている。ふにふにと柔らかく、かすかに湿ったイザナの唇はその時々によってつめたかったりあたたかかったりするのだけれど、今朝のそれはいつもより少しばかりひんやりとして、鶴蝶は身を寄せてくるイザナの肩に手を置き「寒いか」と訊ねた。秋のはじまりの朝日が、カーテンのすきまから淡く落ちていた。寝起き特有の掠れ声に、イザナは「なんで?」と返す。長いまつげにふちどられた大きな目をよりまるく大きくさせたイザナに、だってオマエの唇がつめたいとすなおに言えば、彼は数回、瞬きをした。ぱちりぱちりとまぶたが開閉するたび、銀色の長いまつげが光を弾く。
ベッドにはすでに鶴蝶ひとりぶんのぬくもりしかなかった。朝に弱いイザナが先に起きているなんてめずらしく、鶴蝶は夢とうつつの
間
(
あい
)
をたゆたいながらイザナの腰に腕を回す。スプリングが軋んで、イザナがベッドに体重を預けたのがわかった。そのままシーツに頬をくっつけて横になる。
ベッドに寝そべった状態で真っすぐ見つめられると、その距離の近さや微かに感じ取れる体温に、今さらながらどぎまぎしてしまう。イザナのまなざしは揺らぎなく、鶴蝶を真っすぐに見つめていた。
「オマエのはあったかかったけど」
「オレの?」
手が伸びてきて、頬を両のてのひらで包みこまれる。そのゆびさきはやはりつめたくて、鶴蝶はイザナの手の上に自らの手を重ねた。
ゆびを絡め、手を繋いで見つめあうと、まるでふつうの恋人どうしだ。鶴蝶は頬に熱が宿るのを感じた。イザナとはそういう関係ではあったけれど――少なくとも鶴蝶はそう信じていたかったけれど――、はっきりと自覚をすれば嬉しさで胸がくすぐったい。イザナは口もとをゆるめて、
「ほっぺたもあったけぇ。オマエ、どこもかしこもあったけぇのな」
毛布の中に体を滑りこませ、鶴蝶の胸もとに顔を沈める。長い足が鶴蝶の足に絡まって、逃げようとする動きを封じる。イザナの体は静かに冷えていて、鶴蝶はふいにかわいそうに思った。オレの体温を分けてやりたいと思い、抱きしめてみる。「あったけぇ」。イザナは鶴蝶の体に腕を回して、くすくすと笑った。細長いゆびが鶴蝶の背骨をなぞった。
「ここはあっためてくんねぇのかよ」
「ここって?」
顔を上げて、イザナは自身の唇を指差した。途端、鶴蝶の顔がぼっと朱色に染まった。
「オマエ、な……」
「今さらなに照れてやがんだぁ?」
ヘンなやつだなと言いながらイザナは首を伸ばし、鶴蝶の唇に唇を重ねた。つめたい、と最初は思った唇が少しずつぬくもってゆく。
触れたそこから自分の熱がイザナに伝わっているのが、恥ずかしくてたまらない。イザナに触れられるとたやすく熱を帯びてしまう体――それを知っていてイザナはいつもいたずらばかり仕掛けてくる。でも、そんな彼をとても愛おしいと思うのだった。
「……まだ、寒いか?」
うすい背中を上下にさすりながら問うと、イザナは小さく笑った。答えはなかった。代わりのように、鶴蝶の鎖骨に頬を擦り寄せてつぶやく。
「もう寒くねぇ」
パジャマの布地越しにくぐもった声が聞こえた。身を寄せあって暖をとる自分たちは、ほんとうにただのどうぶつみたいだと鶴蝶は思った。
#カクイザ
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2025.7.27
No.54
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キスはいつも、イザナから、だった。目の前にふっと淡い影が落ち、あ。と思った次の瞬間には唇を掠め取られている。ふにふにと柔らかく、かすかに湿ったイザナの唇はその時々によってつめたかったりあたたかかったりするのだけれど、今朝のそれはいつもより少しばかりひんやりとして、鶴蝶は身を寄せてくるイザナの肩に手を置き「寒いか」と訊ねた。秋のはじまりの朝日が、カーテンのすきまから淡く落ちていた。寝起き特有の掠れ声に、イザナは「なんで?」と返す。長いまつげにふちどられた大きな目をよりまるく大きくさせたイザナに、だってオマエの唇がつめたいとすなおに言えば、彼は数回、瞬きをした。ぱちりぱちりとまぶたが開閉するたび、銀色の長いまつげが光を弾く。
ベッドにはすでに鶴蝶ひとりぶんのぬくもりしかなかった。朝に弱いイザナが先に起きているなんてめずらしく、鶴蝶は夢とうつつの間をたゆたいながらイザナの腰に腕を回す。スプリングが軋んで、イザナがベッドに体重を預けたのがわかった。そのままシーツに頬をくっつけて横になる。
ベッドに寝そべった状態で真っすぐ見つめられると、その距離の近さや微かに感じ取れる体温に、今さらながらどぎまぎしてしまう。イザナのまなざしは揺らぎなく、鶴蝶を真っすぐに見つめていた。
「オマエのはあったかかったけど」
「オレの?」
手が伸びてきて、頬を両のてのひらで包みこまれる。そのゆびさきはやはりつめたくて、鶴蝶はイザナの手の上に自らの手を重ねた。
ゆびを絡め、手を繋いで見つめあうと、まるでふつうの恋人どうしだ。鶴蝶は頬に熱が宿るのを感じた。イザナとはそういう関係ではあったけれど――少なくとも鶴蝶はそう信じていたかったけれど――、はっきりと自覚をすれば嬉しさで胸がくすぐったい。イザナは口もとをゆるめて、
「ほっぺたもあったけぇ。オマエ、どこもかしこもあったけぇのな」
毛布の中に体を滑りこませ、鶴蝶の胸もとに顔を沈める。長い足が鶴蝶の足に絡まって、逃げようとする動きを封じる。イザナの体は静かに冷えていて、鶴蝶はふいにかわいそうに思った。オレの体温を分けてやりたいと思い、抱きしめてみる。「あったけぇ」。イザナは鶴蝶の体に腕を回して、くすくすと笑った。細長いゆびが鶴蝶の背骨をなぞった。
「ここはあっためてくんねぇのかよ」
「ここって?」
顔を上げて、イザナは自身の唇を指差した。途端、鶴蝶の顔がぼっと朱色に染まった。
「オマエ、な……」
「今さらなに照れてやがんだぁ?」
ヘンなやつだなと言いながらイザナは首を伸ばし、鶴蝶の唇に唇を重ねた。つめたい、と最初は思った唇が少しずつぬくもってゆく。
触れたそこから自分の熱がイザナに伝わっているのが、恥ずかしくてたまらない。イザナに触れられるとたやすく熱を帯びてしまう体――それを知っていてイザナはいつもいたずらばかり仕掛けてくる。でも、そんな彼をとても愛おしいと思うのだった。
「……まだ、寒いか?」
うすい背中を上下にさすりながら問うと、イザナは小さく笑った。答えはなかった。代わりのように、鶴蝶の鎖骨に頬を擦り寄せてつぶやく。
「もう寒くねぇ」
パジャマの布地越しにくぐもった声が聞こえた。身を寄せあって暖をとる自分たちは、ほんとうにただのどうぶつみたいだと鶴蝶は思った。
#カクイザ